在宅ワークの募集を9件開いて、9件やめました|パソコン苦手な60代の「あやしい案件」の見分け方

募集24件、レビュー0件。

その数字を見た瞬間、私は応募をやめました。

……なんて、いかにも「わかっている人」みたいに書きましたが、二週間前の私だったら、この数字を見てもニコニコしながら応募ボタンを押していたと思います。

在宅ワークを探して、9件開いて、9件やめた夜

先日の夜、大手のクラウドソーシングサイトで、在宅ワークの募集を9件開きました。

結果は、9件とも見送り。ゼロ件です。

正直に書いておくと、そのときの私はけっこう焦っていました。収入が減る時期が重なって、「早く次を決めなきゃ」という気持ちが、ずっと背中を押していたのです。

焦っているときって、単価の高いほうに目が吸い寄せられます。条件をよく読まないまま「これ、いいかも」と思ってしまう。

「大丈夫かな?」とは思ったのです。でも、あぶない、とまでは思っていませんでした。

今ふり返ると、そこがいちばんあぶなかったのだと思います。

だからこの夜の収穫は、応募できたことではありませんでした。やめる理由を、自分の言葉で説明できたことです。

これまでの私は、「なんとなく不安だからやめる」「なんとなく良さそうだから応募する」の二択でした。60代、パソコンは苦手、在宅ワークは初心者。判断の基準なんて持っていませんでした。

その夜、私はやっと、ものさしを手に入れたのです。

見分け方① 「募集の数」と「レビューの数」を並べてみる

サイトのクライアントさんのページには、これまでの募集件数と、実際に仕事をした人からのレビュー件数が出ています。

この2つを並べるだけで、けっこうな景色が見えます。

・募集の数 ≒ レビューの数 → 健全。募集した分だけ、ちゃんと仕事になっている
・募集の数 ≪ レビューの数 → 大量採用型。評価が多く見えるけれど、短いお試し仕事で数を稼いでいることがある
募集の数 ≫ レビューの数 → 要注意

冒頭の「募集24件・レビュー0件」は、いちばん下です。

24回も募集をかけて、仕事として成立した記録がひとつもない。これはつまり、発注することが目的ではないということです。じゃあ何が目的なんでしょうね、というところで、私はそっとページを閉じました。

見分け方② 「未経験歓迎のマニュアル作成」が、ぜんぶ同じ顔をしていた

私が狙っていたのは、マニュアルやFAQをつくるお仕事です。前の職場でさんざん作ってきたので、これなら胸を張れます。

そこで「マニュアル作成」で検索したのですが……出てくる出てくる、「未経験歓迎・スキル不要・スキマ時間OK」の募集が。

最初は「わあ、こんなにあるんだ」と喜びました。喜んでから、並べて見比べました。

そうしたら、5件が5件とも、同じ形をしていたのです。

・「時給1,500円」と書いてあるのに、報酬は固定で1万〜3万円
・まず10〜15分の「お試し作業」があって、その報酬が50円ほど
・募集人数が5〜10人
・タグはいつも「スキル不要」「継続あり」「スキマ時間歓迎」

会社の名前はぜんぶ違うのに、設計図が同じ。テンプレートなんですね。

そして気づきました。この形の募集は、私が長年かけて積み上げてきた経験に、一円の値段もつけていないのです。看板は立派だけれど、中身はそうではない。

「未経験歓迎」は親切な言葉に見えます。でも裏を返せば「誰でもいい」ということでもある。経験者を本気で探している会社は、わざわざ「未経験歓迎」とは書かないのだと、やっとわかりました。

それにこの形、焦っている人ほど引っかかるようにできています。落ち着いて読めば「時給1,500円なのに固定1万円って、何時間働く前提なの?」とすぐ気づくのに、「早く決めたい」の状態だとそこを読み飛ばしてしまう。狙われているのは、たぶん能力ではなく、心のほうです。

見分け方③ 「あぶないからやめる」と「合わないからやめる」は、別ものです

ここ、私がいちばんはっきりさせたかったところです。

9件のなかには、まったく怪しくない、立派な会社さんもありました。募集245件・レビュー333件・完了率98%。文句のつけようがありません。

でも私は見送りました。週20時間の稼働で、カメラとマイクをつないだ面接があって、私の生活には合わなかったからです。

これは「あぶない」ではなく、「合わない」。

相性の話であって、私の能力の話でも、相手の誠実さの話でもありません。ここをごちゃまぜにすると、断るたびに自分がダメになった気がしてきます。それは、もったいない。

ついでに、私が長らく誤解していたことも白状します。「オンライン面接がある案件はあやしい」と思い込んでいたのですが、これは間違いでした。面接そのものは、ぜんぜん危なくないのです。

見るべきなのは、面接の有無ではなく、こちらでした。

募集ページを閉じた状態で、報酬と稼働時間を言えるかどうか。

言えるなら、その面接は「確認」です。
言えないなら、その面談は「説得」です。

これが私の、いちばんのお守りになりました。

これだけは、絶対に近づかないと決めたもの

見分け方の話とは別に、最初から線を引いたものがあります。

「お客様対応と発送業務」「荷受け」「荷物の転送」。

自宅で荷物を受け取って、別のところへ送り直すお仕事です。在宅ワークの顔をしていますが、これは詐欺の受け取り役に使われてしまった実例があります。知らずに引き受けて、加害者側に立たされることがあるのです。

報酬がいくらでも、条件がどんなによくても、これは見ません。決めました。

「仮払い」が終わるまで、一文字も書かない

もうひとつ、覚えたばかりの大事な仕組みを。

サイトには「仮払い」というものがあります。契約が決まると、クライアントさんが先に報酬をサイトに預ける仕組みです。

つまり、仮払いが済んでいれば、お金はもうそこにある

だから私はこう決めました。「仮払い完了」の表示を自分の目で確認するまで、一文字も書かない。

そして、やりとりがサイトの外(LINEやメール)に移った瞬間、この保護は消えます。外に出ようと言われたら、そこでお別れです。

やってみて思ったこと

9件開いて9件見送った夜、ひとつも決まらなかったな、とは思いました。焦っていたので、なおさらです。

でも数日たって、思い直しています。

焦っていたからこそ、ものさしが必要だったのだと。

余裕があるときなら、勘でもなんとかなります。危ないと感じたら閉じればいい。でも焦っているときの勘は、当てになりません。「早く決めたい」が「これで大丈夫」に化けてしまうからです。

だから数字なんですね。募集の数とレビューの数を並べる。ページを閉じて報酬と時間を言ってみる。気分に左右されない手順を持っておけば、焦っている日の自分を、落ち着いている日の自分が守れます。

応募して決まったお金は一回きりですが、見る目のほうは残ります。60代からの在宅ワークって、たぶんそうやって積んでいくものなのだろうな、と思いました。

パソコンが苦手でも、業界に詳しくなくても、数字を並べて見比べることはできます。募集の数とレビューの数、それだけでいいのです。

明日からできる、たったひとつのこと

もし今、応募しようか迷っている募集があったら、試してみてください。

そのページを閉じて、「報酬はいくらで、週に何時間か」を声に出して言ってみる。

すらすら言えたら、その募集はあなたに情報をくれています。
思い出せなかったら、ページに戻る前に、ひと晩おいてみてください。

急いでいるときほど、ひと晩が効きます。

断ることは、負けではありません。次を選べる場所に、まだ立っているということです。

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